私に恋を教えてくれてありがとう【上】
「“彼女のことはもう好きじゃないか

 諦めるか”

 そう聞くと、何も答えないのよ・・・・・

 
 それが一番堪えたわ・・・・・・

 




 皮肉よね。





 いくら戸籍上結ばれていても

 このことがあって以来、牧田の心は

 私のもとにはかえってこなかった・・・





 そして、今もこうして・・・・」



声が上ずりはじめた夫人は

カーテンを握りしめながらゆっくりとそらに




“佐藤華子”を重ねながら




聞き取れないくらいの


かすれた声で嘆いた。


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