私に恋を教えてくれてありがとう【上】
そらは知らぬ間に彼女を傍聴席から見ている感覚に襲われ、

気がついたときには既に彼女は“夫人”に戻っていて出て行けと手で追い払われていた。






一応何かあったらすぐナースコールを押すように伝え、




ドアの前で深く一礼してから静かに病室を後にしようとした。






すると、夫人が立ち上がり空そらを引きとめた。







「あと一つ……


 聞きたいことがあるわ」



気丈を装う声に


そらは振り返った。






「佐藤華子は妊娠して病院を辞めた。






 ……

 あなたは

 ……今の父親の子供なの?」








「し……」


< 139 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop