私に恋を教えてくれてありがとう【上】
「そらちゃん!!」




どういった展開なんだろう。


そらの考えでは

何とも剣幕な雰囲気になる筈だったのだが、

向こうにはこれっぽっちの溝も感じられない。



むしろ歓喜極まりないといったところだ。

母は満面の笑みで淳一郎と手を取り合っているではないか。



「ちょっ・・・なに?どうしたの!?」



彼は首をちょっとばかり傾げ、思いきり格別な笑顔を真っ直ぐそらに投げ





「そらさん、名前を考えなくてはいけません」




そう告げた。



犬が毛を乾かすみたいにして

カーテンのような前髪振り払い、


頬を桃色に染めた醤油顔が、幸せで満足げな溜息を大きくついた。


その姿は、おとぎ話の中の、幸せを手に入れたお姫様のようだった。



それを見てそらも桃色に染まっていった。

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