私に恋を教えてくれてありがとう【上】
8、箱
命の力はすさまじいものだ。
授かったと耳にしただけでこうまでも
凛とした人間にさせてしまう。
物凄い特効性だ。
さっきまでの自分を汚いという思いも、
隠し事への執着心も塵みたく思え
そらの中の忌まわしい生き物にとどめを刺したようだ。
だって、自分がどうあれ
この子はこんなに愛おしくて
きれいな存在なんだ。
もしかして、
母も同じ気持ちだったのかもしれない。
そらの中には既に、
“この子の為なら何でもする”
という気持ちがずっしりと構えていた。
もっと強い自分になりたいという
願望さえ湧き出した。