私に恋を教えてくれてありがとう【上】
これを期に
『私は母の過去を受け入れるべきなんだ』
“隠す”ということ、
“不倫理”ということだけに
とらえられている自分を成長させる
ときなのだ。
彼からの“隠し事”の告白にしても
その内容に母が関わっていなければ
即刻軽蔑をするだけで終わってしまっていただろう。
そして、いくら彼でも、密かに別の検査をしたというだけで、
この先の付き合いまでも訝っただろう。
でも、その場に母がいたから・・・。
私にとって母の反応が基準になっている様だった。
戸惑って
淳一郎に唸る気持にもなれなかった。
まだ私は母のお腹の中にいる状態みたいだ。
一人前の大人なふりをしていて、まだ母の何かを求めている。
引き金は間違えなく
あの“箱”でなければいけなかった。
私を産んでくれた
この母親が結婚前にして 最後の教育をする。
そういう運命なんだ。
私の中の理不尽な感情を正せるのは
私に外も中もそっくりな母、
華子だけなのだ。