私に恋を教えてくれてありがとう【上】
そらは
母の足元に落ちた手提げ袋が気になり始めた。
きっちりとした四角い何かが模(かたど)られている。
「お母さん、・・・それは・・・」
あれに違いない。
そらは勘づきながら、わからないふりをした。
「あ・・・・うん・・・そうなの」
母はそらの朗報に気がとられていて、
わくわくした顔を元に戻せないまま袋の中から20センチほどの見たことのある、
ビニールテープにぐるぐる巻きの箱を取り出した。
淳一郎は これがそうかと、
推理中の探偵みたいなポーズでそれを見た。
母はそれをそらに厳かに渡し
やっと三人とも本題に入る準備が整った。
外は風が大暴れしていた。
強い風が病室の窓を激しくたたき
緊張を運んだ。