私に恋を教えてくれてありがとう【上】
そんなこんなぼさっとしていて

まったく作業が進んでいないことにはっとした。


すると階段の下から



「そらちゃん??荷造りどう?

         もう夕飯だよ?」




「うんうん!!わかったー!」



50歳近いとは思えないかわいい母の声が響いた。



急いで下に降りようと

勢いよく立ちあがったもんで

築100年になる押入れに打撃を与えてしまった。





起立性の貧血を起こしやすいことを

うっかり忘れていたのだ。



「あぁ……まずいかも」



とっさに前に手をついたので



襖(ふすま)が外れ、押入れの中に頭をつっこんで埃をたてていた。


この光景が、どこかのマンガから抜け出してきたみたいで

へへっと得意のいやらしい笑いをしたが

この状況はご飯に呼ばれた自分にとって、結構面倒臭いことに気づいた。




「……これだけでも直してからいこう」


そう決めて

煩(うるさ)いパンク系のパーカーの袖を捲くり

黒いスキニーのパンツに埃がつかない様に

自分よりも大きい襖を 慣れないながらも

直し始めた。



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