私に恋を教えてくれてありがとう【上】
「……あ?」





父はあんぐり口をあけ間抜けた声を出して危うく

刺身の為に準備していた醤油瓶をひっくり返しそうになり

ますます眼鏡がずり落ちた。



結婚を控えた娘は

なんの抵抗もなく

こんな話を聞気出すのに

今がベストタイミングだと思ったのだ。



「出逢ったときの話とか

   そういえば何にも知らないんだよねぇ

      “もうすぐ嫁に行く娘”なのに」




なかなか言い出さない父に迫った。







「そうさなぁ……」



父はこほっと咳をはさんで

ごま頭を少しかいた。



ご飯を盛り終わって席に着いた母は

ちょっと父の話に興味がありそうだったが

話を終わらせようといただきますをした。



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