私に恋を教えてくれてありがとう【上】
「自分の中だけで?」



そらがちょっと真剣に聞いた。



「うん。

 なかなか頑固なところがあってね」





「辛いね」ちょっとおやじっぽく
        ビールを注いだ。


「相談すればいいのにね」




祐樹は笑った。



「そういうストレートなところは俺に似てるんだ

 そらは

 まぁ仕方ないんだよ」



そらは一途であろう父に同情してか、


母 華子の事を自分勝手なんでは、と非難した。




「父さんはお母さんの
     そういうところ嫌じゃないの?」



祐樹は少し困った顔をした。

「まぁ……


 

 ……うーん……

 嫌とか嫌じゃないとか

 そんな気持ちにはならなかったし



 もうちょっと深い気持ちかな

 
 まぁ・・・そうだな。

 そらは、いまの華子みたいに

 

 なんの隠し事もせずに、淳一郎君と

 二人で新しい家庭を築きなさい」




そらの頭にぽんっとやさしく手を置いた。


そらは首をひねった。




……“今の華子”


昔の……若いときの母はどうだったんだろうか。




父は、ビールの入ったグラスを片手に

まだ洗濯をいそいそたたんでいる

母のもとへと 

リビングにそらを残して去って行った。
< 43 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop