私に恋を教えてくれてありがとう【上】
明らかに自分がまだ

子供扱いされている気がして

そらは食器を片した後、二人のもとに行くには気が向かず

自分の部屋に戻り荷造りを再開しようと思った。



「ごちそうさまぁ」

と、二人のいる部屋のまわり廊下を通り過ぎようとしたら

そういえば!と中から声がして華子が障子を開けた。



「そらちゃん!さっきすごい音しなかった?

   何か落としたの?」


「ははは」




「いつものめまい起こして襖に殴りかかちゃったの
 
 まぁそのおかげで、

 この家がどれくらい古いのか身にしみた

 引っ越し時だね」





華子はそらの身を案じて心配な顔つきをした。





「あ、お父さん。
 
 古い家って押入れの天井ベニヤ板なの?」



「あぁ、

 どうだかわからないけど。

 うちはどこの押入れもベニヤだ」




片腕で頭を支え寝そべっていた父が

そらに“乾杯!”とグラスを掲げて言った。


< 44 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop