私に恋を教えてくれてありがとう【上】
「……あれ
そらちゃん!
お母さん大丈夫だっていったのに!」
平然を装うために必死なように見えた。
「それなに?」
きょとんとした顔でそらがたずねた。
手に持っているものに今まさに気づいた仕草をして
「あぁ……!これね!
お母さんのなの
この部屋、お母さんが若い時に
使ってた部屋でね……」
「うん。聞いたことある。
高校から二十何歳まで住んでたんだよね」
華子は23歳で父祐樹と結婚し、両親をこの家にのこしていったのだ。
その10年後、年老いた夫婦にこの段差の多い家は危険だということで兄夫婦と一緒に暮らす話になり
この家に私たち 白石家が暮らすことになったのだ。
「……
そうなの。
その時にお母さん忘れ物をしたみたい」
「押入れの天井の裏に?」
そらが鋭く詰め寄った。