私に恋を教えてくれてありがとう【上】

そらは落胆を隠せないまま一階に着き

廊下をナメクジのように歩いた。





仕方ない・・・とぼやいて




携帯をバックに放り込みそのまま別館の

更衣室に向かおうとした。



すると


わざとらしい咳ばらいが聞こえた。



淳一郎がもう閉まっているいるはずの院内の喫茶店で

こっちに来いと手招きしているのだ。





そらはご主人様を見つけた犬っころの気持ちがわかった気がした。




「あれ、どうしたんですか?」





息を弾ませて、前髪を整えながら近づいた。





「はい、お疲れ様でした」





淳一郎は自動販売機で買った缶コーヒーを

そらに投げて渡した。

< 69 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop