私に恋を教えてくれてありがとう【上】
そらは落胆を隠せないまま一階に着き
廊下をナメクジのように歩いた。
仕方ない・・・とぼやいて
携帯をバックに放り込みそのまま別館の
更衣室に向かおうとした。
すると
わざとらしい咳ばらいが聞こえた。
淳一郎がもう閉まっているいるはずの院内の喫茶店で
こっちに来いと手招きしているのだ。
そらはご主人様を見つけた犬っころの気持ちがわかった気がした。
「あれ、どうしたんですか?」
息を弾ませて、前髪を整えながら近づいた。
「はい、お疲れ様でした」
淳一郎は自動販売機で買った缶コーヒーを
そらに投げて渡した。