私に恋を教えてくれてありがとう【上】
「僕、これでも勘はいい方なんで


 いま 何か悩んでるんじゃないんですか?」






片方の眉を上手に動吊り上げる彼を見て

背のびしていた自分が馬鹿みたく思えた。






実際、彼に子供扱いされないように

しっかりしないとと思っている反面、

早く相談したいと思っているのだから……




白石家で矯正されたそらの性格では

“隠し事”だなんて無理なのだ。




正さないといけないのは、自分のこの無意味な迂回だ。




そう承服した。




そらは淳一郎にも、自分にもお手上げになった。





そして、とりあえず昨日の母との喧嘩のくだりを

簡単に笑いながら話した。




淳一郎はそれに何も口を挟まず、相槌だけうって聞いてくれた。





「私も母も頭に血が昇ると

 思ってもないことを言ってしまうたちだから

 

 結婚なんてやめろとか……


 言ったんだとは思うんだけど



  まぁ

 私も私で本当 頭の悪い動物みたいに

 無理やり箱をとってしまった

 

 …………  

 

 でも、あんなに怒鳴ることないかなー



 なんて……」





そらはもじもじしながら話を終えた。




彼はコーヒーの最後の一滴をぐっと飲み干して言った。







「本当にその箱は

 “タイムカプセル”だったんですかね」





淳一郎の言葉にそらはきょとんとした。



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