私に恋を教えてくれてありがとう【上】
廊下の明かりを頼りに
電気をつけなかったこの喫茶店で
夫人と二人きり・・・
十分な明かりがなかったことを
こんなに後悔したことがあっただろうか?
薄暗がりで彼女のひきつった顔を見ると
反射的に鳥肌が立った。
そらは、彼女のたばこの灰が
落ちそうなことに気が付き灰皿を渡そうと
テーブルのはしに手をのばしたが
彼女は飲みかけのコーヒーの缶にそれを落とした。
悪意が見られる
そう感じた。
「じゃぁ
私は失礼するわ
コーヒーありがとう」
お互い似非笑いをした。
彼女の置き去りにしたこの“灰皿”を投げつけてやりたい衝動に駆られた。
それか今追いかけて
『まだのこってますよ?』と渡してやりたかった。