私に恋を教えてくれてありがとう【上】
「・・・さむっ」
身震いと同時に誰かがホッホッと走ってくる足音に気がついた。
「おい!こんなく時間にあぶないぞ!」
父、祐樹だ。
飛び出してきたようで
パジャマに綿入れをはおっただけの格好だ。
なんて間抜けた男だろう。
・・・母は何でこの人と結婚したのだろう、と思わないでいられない風采(ふうさい)に見えた。
「お父さん!どうして!?」
やれやれといった顔つきだ。
「どーーーーしてじゃないだろ!
そらがちゃんと家に入って行ったのか
淳一郎君から電話が掛ってきたんだよ!」
そらは、一本やられた!という顔をした。
・・・当たり前だ。
・・・心配をかけてしまったのだ。
そらは車の中での自分を思い出した。
無理やり話題を振り、今日の事に全く触れさせようとしなかったのだ。
触れられるのが怖かったのだ。