私に恋を教えてくれてありがとう【上】
祐樹は立ち上がり
そらの前に屈んだ。
歳を重ねてやっと二重になった目で
彼女をみつめた。
「そら
人はなぁ・・・・・
誰しも、そっとしておいてほしい
ってものがあるんだ。
そらにもあるんじゃないか?
たまたまお母さんにとっては
あの箱がそっとしておいてほしいもの
だったんじゃないのかな
もしかしたらあの中身はとっても
幸せなものが入っているかもしれない。
でも、
その反対も考えられるだろう。
お父さんはそんなもの怖くて開けられない
お父さんの予想は
うーーん
きっと華子は昆虫が好きだから
カマキリの卵でも入れたんじゃないか?」
二人して身震いした。
そして、笑い合った。
「さて、5分たったぞ、帰ろう
お父様が風邪をめしてしまう」
父が立ちあがった。
「・・・・こほこほ!」
そらが咳をした。
「あ、大丈夫。
最近風邪っぽいだけだから」
と言い、父がそらにはおわせようとして脱いだ綿入れを
うまく回避して家へ向かった。
道中父は華子のことばかりしゃべり続けた。
嗚呼・・・・
この人は本当に母さんを愛してるんだ。
そして、本当はあの中身を知っているのでは・・・
そう感じたのだ。