運命のレール

苦難

母は入院した。
私は学校と病院を行き来する日々を過ごしていた。


よく分からない機器に囲まれ可哀相な母を見ては家に帰り、朝起きたらいつも通り学校へ。
そんなこんなで母の手術は終わり、無事に退院できた。ただ…



『転移が見つかりました』


気掛かりだった。
先生の一言。


大丈夫よ、と母は言っていたが。




私には内緒で抗がん剤を打ち始めた母。
様子ですぐに分かっていた。



中学にあがった私は、みんなと変わらず普通に過ごしていた。


楽しくもつまらなくもない中学校生活を。




中学2年の冬休み…
私はずーっと病院に居た。



何日か前に親戚が家に来た。母の妹夫婦だ。
お母さんを説得している様子だったが、私を話のなかには入れさせてもらえなかった。



急遽、再び入院する事になり、今私は病院に居るのだが。

すでに母は変わっていた。別人だった。
髪はなく坊主。
骨と皮しかない痩せた体。栄養を取っていないせいか歯はボロボロ。



見たくなかった。
辛かった。
でも私はこの時すでに決心していた。




お母さんの死を見届ける




12月30日
母はいつにもなく元気だった。
一緒に売店まで行ったり、りんごも口にしていた。
食べ物を食べている母は久しぶりに見た。



『また明日来るね!』




…これが最期の笑顔だった
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