WITH...ME
「うはは、派手にぼろぼろーっ。うわ、歯ァ落ちてるし」
「それは俺のじゃない。相手のだ」
口の中は切れているが、歯は折れていないハズ。
小女はかがんで足元にあった歯を拾って手のひらで転がして遊んでいた。
おそらく、学生服じゃなかったら中学生……いや、小学生にも余裕で見られるくらいに小女は小さい。
少なくとも、17歳で高校二年生の葵と同い年には見えないくらい。
……ここの学園、紅葉賀学園は由緒正しき明治時代からある超名門校。
伝統を重んじるこの学園は、制服も普通とは違う。当時、開校したばかりの制服の名残で、男女共に和服ベースになっている。
黒を越えた、むしろ紺に近い、腰まである長い髪。大きな瞳。こうしてみると人形みたいだなぁ。
「こら、汚いからやめなさい」
「うはは、葵、お母さんみたいだー」
小女はそう言うと、人差し指と親指でその歯を弾く。
それは、2メートル先のフェンスから下へと落ちていった。
それを確認すると、小女は笑顔で振り返った。
「で?」
「は?」
「20人相手にリンチされて、どうだったの?」
まったくコイツは……どうせどこかで見ていたんだろう。
小女はニコニコしながら「ん?」と首を傾げる。
「そりゃあもちろん――」
20人相手だし、しょうがないよな。
「――――全員、殺した」
「そう」
小女は、笑顔を崩さない。
賢木小女。
この学園都市内で最も弱い、『最弱』――
柏木 葵。この学園都市内で最も強い、『最強』――
――――この2人が、この物語りの鍵を握る――――