氷の上のプリンセス

保健室を出て行こうとしたきなこは、行きがけにニヤニヤしながら、

「後で何話したか教えてね♪」


と、私に耳打ちしていった。


まったく、ミーハーなんだから。


トンっとスライド式の保健室のドアが閉まって、先輩と2人きりになってしまった。


先輩は、カーテンを開けて前で腕を組みながら壁に寄りかかった。


『………。』


「大丈夫か?」


『はい。足だけちょっとひねったみたいで…。
でも、これから病院に行ってくるので大丈夫です。』


「そうか…。
一人で行けるか?」

『はい、大丈夫です。
今さっき先生にタクシー呼んでもらったんで、もうすぐ出れます。』


「………そっか。
お前さぁ……。
誰かに、変なことされてるんじゃないのか?」


『………。』


思わず下を向いてしまう。


「階段で音がしたから、驚いて見に行ったら、変な女が走って行くのが見えた。
まさかとは思うが、突き飛ばされたんじゃないか?」


先輩が、真剣な目をしながらこちらを見つめてくる。



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