氷の上のプリンセス
雨が降っているせいかもしれない。
血を見たせいかもしれない。
自分の手に視線はあるけれど、目に入ってきた視覚の情報は、脳内に入ることはない。
“あの日”の記憶が、フラッシュバックのように頭に思い浮かんでいた。
今は、いつなのか?
あの日に戻ってしまったのか?
ザ――…ザ――…
ザ――…
雨は冷たいはずなのに、
生暖かい血液が、
私の手にまとわりつく。
身体が震えてきた。
ハァ…、ハァ…。
息が乱れる。
お姉ちゃん………。
「なんで、こんなとこにカッターの刃が…って、おいっ!!
実莉!大丈夫か!!」
先輩に呼ばれた自分の名前だけ聞き取ることができた。
私は、そのまま意識を手放した――……
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