氷の上のプリンセス

「…じゃ、そういうことだから。
――……お前、ひつこい。
じゃあな、切るぞ。」


先輩は、少し眉間にシワを寄せて一方的に(多分)電話を切った。


『あっ…あのぉ…。』


「悪い、うるさくて起こしちまったな。
調子大丈夫か?」


眉間のシワは取れて、優しい表情になったのがわかる。


『大丈夫です。
あの、私……どうしてここに…?』


「ああ、お前昨日の夜、部屋の前で倒れたんだよ。
カバンからカギ出して、勝手に中入って寝かせたんだ。
心配だったから、俺もここにいたんだけど…、悪かったな。勝手なことばかりして。」


『いえっ!!
謝らなきゃいけないのは私の方です!
迷惑かけちゃってすみません!!

って、今、明るいですけど朝ですか!?』


「あぁ、朝だ。」


『えっ!?じゃあ、先輩、一晩中付き添ってくれたんですか!?』


「あぁ、って言っても俺も少し寝ちまったけど。
悪い。」


『なんで先輩が謝るんですか!?
本当にすみません!!
さっきの電話…、何か予定あったんじゃないですか?
私、もう大丈夫なんで、そちらを優先してください!!』







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