氷の上のプリンセス
きっと、お姉ちゃんのことはニュースにもなったから先輩は知ってると思う。


私が思い出すことで、嫌な思いをしないか気をつかいながら話してくれている。



『私……、血を見ちゃうと駄目なんです。』

少し震えてきた。


先輩に気づかれないように、両手を掴むようにして組む。


『私、あの事故の後PTSD(心的外傷後ストレス障害)で治療してたんです。
トラウマみたいなやつなんですけど…。今はだいぶ良くなってきて、年に何回かしか病院に行きませんが。

昨日は、雨も降ってたのもあって…。
それに、血が…。』

言いかけて、一息深呼吸する。


『私、あの時何もできなかったんです。
なんで、私じゃなくてお姉ちゃんが…。』


半分涙目になっていた。


その時、私の体が突然温もりに包まれた。


そして、私の大好きな優しい低音の声が耳元で聞こえた。


「実莉……。
つらいこと話させてすまなかった。
こんなに震えてるのに…。」


先輩の腕に力が入って、ぎゅっとキツくなる。


でも、全然苦しくなくて……。


先輩の腕の中は、ドキドキするけど、すごく安心できた。



< 138 / 161 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop