氷の上のプリンセス
「有坂って…、あの有坂の親戚か何かか?」
綺麗な男の人は、少し驚いた顔でこっちに向かってきた。
『たぶん…。あの有坂の妹です………。』
男の人の言いたいことはわかった。
あの有坂とは、お姉ちゃんのこと。
お姉ちゃんを知らない人は、まずこの学校にはいないだろう。
このリンクに来ている時点で、この男の人は少なくともスケートの関係者。
それに、私は、この人を知っている。
「……。」
『……。』
「………。」
『………。』
お互い、無言のまま時間だけが過ぎていく。
そんな、冷たい空気を切ったのは私ではなく、端正な顔をした綺麗な男の人の方だった。
.