氷の上のプリンセス

入って気づく。


緊急事態とはいえ、勝手に女の部屋に入っていいのか?


抱える実莉は、起きる気配がない。


「…クソッ、しょうがねぇ!」


電気を付けて実莉の靴を脱がせ、中に入る。


ベッドは、あっちか。


布団をめくり、寝かせる。


制服のジャケットが濡れているのに気づく。


脱がす……か。


ゆっくり、脱がせていると、変な気分になる。


本当に、男ってバカだよな。


実莉を見ると、嫌な夢でも見ているかのような表情をしている。


明らかに、さっきの様子はおかしかった。


自分の手の傷を見つめて震えていた。


もしかしたら…、亡くなった姉さんと昔事故ったことと関係があるのかもしれない。


こんな、つらそうな表情を見ると放ってなんていられなくなる。


でも、自分に何が出来るかわからない。


ましてや、自分はこいつのただの先輩に過ぎない。


俺は、こいつの特別になりたい。


だが……、俺にその覚悟はあるのか…?



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