氷の上のプリンセス
『ごめんなさい、聞こえなかった。
何て……。』
「…よしこ……。
池田…佳子(イケダヨシコ)って言うの……。」
俯いたままの池田さんは、力なく言った。
名前、あんまり好きじゃないのかな。
私は、たぶん言いたくなさそうなのに、教えてくれた様子に感謝の意味をこめて、
『教えてくれて、ありがとう!
よろしくね、池ちゃん♪』
と、笑顔で言った。
すると、俯いていた池ちゃんが顔を素早く上げ、みるみるうちに表情がパーッと笑顔になった。
「うん!!よろしく!」
満面の笑顔。
すっかりご機嫌になった池ちゃんは、私にすり寄ってきた。
浜崎先輩の後を一緒について行くとき、
「実莉ちゃん、マジ優しいね。
私、自分の名前嫌いなの。
昔、クラスの男子にバカにされたことがあってさぁ…。
それ以来、自分の名前呼ばれるの嫌で嫌で…。」
っと、話してくれた。
別にかわいい名前なのに、
昔やってたアニメかコメディドラマの主人公がそんな名前だったせいらしい。
小学生の男子とか、
そういうのよくするからね…。
.