氷の上のプリンセス

そうなんだぁ。


「……でも、安心したよ。」


『えっ?何か言いました?』


結城先輩の低い声が、小さな声で何か言った気がして、問いかける。


「いいや、何でもない。」


そう言って結城先輩は、切れ長の目を優しく細めて笑い、私の頭をくしゃくしゃとした。


うわぁ〜!!!!!


なんかこれ、嬉しいっ!!!


テレビの恋愛もののドラマとかで見たことある。


主人公が、好きな人に髪の毛くしゃくしゃってされて、嬉しい表情するやつ。


こんなに嬉しいもんなんだ…。


ブラウン管の向こうで、嬉しそうな表情をする主人公の気持ちなんて、今まで全然わかってなかった。


フィギュアスケートの振り付けも、ドラマや映画の気持ちを考えてつくっていたけど、

全然、分かってなかったんだ…。


まだまだ、全然ダメだな…、私。


本物の気持ちを知った私は、嬉しさ絶頂期から一気に自爆して落ち込んでいた。




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