氷の上のプリンセス
リンク内に入ると、俺は動けなくなった。
……魅せられた。
目が離せなくなった。
こんなこと言うのは柄じゃないが、リンクの上に天使がいると本気で思った。
着ている服はジャージだったが、
リンクの上で気になるアイツが、気持ちよさそうに滑っている姿は、
本当に……美しかった。
俺は声も出せない。
幸い、実莉はこっちに気づかず、ただ楽しそうに滑っていた。
今すぐ、そばにいきたい。
抱きしめたい。
胸が信じられない早鐘をうつが、
どっかで冷静な自分が警報を鳴らす。
これ以上、ハマってはいけないと。
治まることのない心臓の拍動を無視し、俺はリンクを後にした。
…それから、練習後に何度か実莉の滑るのを見たが、
そのたびに声もかけず、同じようなことを繰り返していた……。
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