うちゅうじん。[隊長………もんじゃのだし]
8月。
夏の盛りである。
しかし、蜂達は特に動く気配がなかった。
ミツバチ達は普段と変わらない働きぶりである。
瀬戸内海の島々では、多少のいざこざはあるものの、大問題には発展しないようだ。
一進一退のままである。
スパオオの方も、気味が悪いほど静かであった。
瀬戸内海のいざこざの他では、人里から離れているらしく、被害者も増えていない。
しかし、確実に数は増えているはずなのである。
目本テレビ、ヌッキリのディレクターは、毎年蜂被害の多くなる秋に向けて、再びスズメバチ被害の特集番組に意欲的になっていた。
スパオオの実態、ミツバチ達の動き。
今まで追ってきたディレクターとしての感覚が、それぞれの水面下での動きを必死で分析している。
現実として、過去の動きから考えると、今回何かあるとすればかなりの規模になる恐れがある。
ひと月余りの沈黙。
ディレクターには、嵐の前の静けさとしか思えなかったのである。