うちゅうじん。[隊長………もんじゃのだし]
「これも違うな………」
目本テレビのあのディレクターが各地に送った取材班から、送られてきた映像を分析している。
地方局を含めて、30以上の取材班を張り付けたディレクター。
スパオオの件もそうだが、ここに来て持ち上がった「ハエ問題」。
あの学者先生は、わからないと言っているようだが、裕子ちゃんが執着しているので、無碍にも出来ないし、ディレクター本人も興味が湧いていた。
多くの取材テープの中から、「ハエ」らしき物がスパオオの中を飛び回り、落としてゆくシーン。
落ちたスパオオにミツバチが群がるという、かつて有り得ない衝撃的なシーンをゲットした取材班が12組。
延べにして20時間以上の取材テープを分析するのは、大変な作業である。
しかし、その中でちょっとした発見もあった。
『触角のないハエ』
最新のデジタルカメラとはいえ、望遠で撮られた映像では解像度が足りなく、判断が難しいのだが。
時間軸を整理して分析してみると、関門橋 (島の名前) 愛媛 高知の4ヶ所で起こった蜂達の戦闘。
それぞれに数匹のハエが飛び回っているようだが、どうも一匹だけが違う動きをしているようだ。
しかも、その一匹のハエには触角がないのである。
本来、ハエだけでなく昆虫には、生活必需品としての触角があるはずなのだ。
つるんとした顔は、画像を拡大するとなんとなくわかりやすい。
4ヶ所の戦闘のうち、高知を除いて3ヶ所で確認出来ている。
それにしても理解に苦しむのは、山口、祝島から姿を消してから、わずか15分で次の場所で確認されていることである。
ビデオには、そのあたりは映っていなかった。
「うーん。これだけじゃわからないな~。望遠で撮っているから、ブレもあるし解像度も良くないんだよ。スパオオの件が一段落したら、目本テレビの資料室で確認してみますか。」
ハエ騒動というほどではない(世間的に)ものの、関係者の中では注目されているハエ。
思えば愛媛では、画像の中に触角のないハエを見つけては、キャイキャイはしゃいでいた裕子ちゃん。
目をキラキラさせて喜んでいた彼女は、いったい何を企んでいるのか………。