【完】絶対引力
この顔は確信犯。
答えを分かってて聞いてる。
「や、やだ…。」
「ぷっ。かーわい。」
私の頭をわしゃわしゃと撫でてそのせいで髪がぐしゃぐしゃになる。
でも、こんな些細なことが凄い嬉しくて、幸せで。
伊織が近くにいるんだと実感する。
普通はこんなの当たり前かもしれないけど、6年も離れてた私には当たり前じゃない。
だからこそ普通の数倍の幸せを感じる。
「目の前でいちゃつくのやめてよ。」
「早く行こうよ。」
涼と優が呆れ顔で言った。
いちゃつくって…。
さっきよりも顔の体温が上がるのが分かる。
「はい、手。」
そういって伊織は私に手を差し伸べる。
私は迷うことなくその手をとった。