【完】絶対引力
辛そうな顔で、でも真剣に私を見て言うから。
私の瞳には涙が溜まる。
「ぅわっ…。」
「ちょっ…小夜っ。」
やばっ。
また転ぶっ…。
思わず目をつぶった。
「っ…。」
「捕まえた。」
何も掴る所が無くて、今頃海に浸かってるはずの私は伊織の腕の中。
抵抗するが離してくれそうにはないため諦めた。
「ねぇ、小夜は俺のこと嫌い…?」
「嫌い。」
ズバッと言い切る。
…嘘。本当はそんなことない。
「本当に?じゃあ、なんでここ来たの?」
伊織の腕に力が入る。
足は海に浸かったまま抱きしめられて…。
逞しい腕、伊織の匂い、その全てが伊織は男なんだと感じさせられた。