ロデオ・カルテット─シールドロック─鳥籠編
 ペシェには少女が何を言っているのかわからなかった。

 それでも、危機から緩和されたことを悟り、取り付けられた腕輪を外そうと解除呪文を幾つか口にする。

「鍵っ、これかなっ」

 クルルが、何時の間にか開いたドアの向こうから銀色の鍵をペシェに投げた。
 鍵を受け取り、頷いて鍵を外し、腕輪を床に投げるとドラゴンが弾き飛ばすDMに向かい、詠唱呪文をぶつけた。

 数匹の炎を纏う馬が、DMに体当たりその身体を焼く。

 そして、即座に鍵を足でも挫いたのか動けないスピカに投げた。

 ところが、その鍵をラミアの手が掴む。

「良い素材を逃がすな。
 それが、お母さんの命令だから」

 言えば、その鍵をなんの躊躇いもなく呑み込んだ。既に、人間の持つ生態を何らかの方法で、狂わされたモノの所行だった。

「あは、何、びっくりしたの?
 わたし凄いでしょう」

 硬直したペシェとスピカ、そして、その豹変振りに昔の面影が消えた自分に青ざめるクルルを見渡して、愉しげに笑う。

 いや、クルルが兄だと気づく気配も無いようだった。

 今居る人間の声も届くかどうかわからない。

「ラミア、俺だ。
 兄のクルルだ」
< 127 / 142 >

この作品をシェア

pagetop