ロデオ・カルテット─シールドロック─鳥籠編
 背筋に冷や汗と悪寒を感じながら、こっそり取り外したタイピンをポケットに滑り込ませて、足早にゲートを遠ざかる。

 本来、町への立ち入り許可にはIDの照合が必要となる。

 IDとは、生まれながらにとりつけられた住民番号であり、職種によって渡される小物に刻まれており、照合は小物に組み込まれているICを光で読み取ることになっている。

 大陸には、PC(パソコン)が普及しており、IDナンバーとプレミアムパスひとつで、個体情報がPCイリスから引き出せるのである。

 因みに、PCイリスとは監獄島で管理されており、記憶容量(メモリキャパシティ)が大陸一の代物である。PCイリスの中核には、歴史の黒い部分を納めた部屋があると噂され、ハッカーやクラッカー達が必死にその扉を開こうとしているという。

 その照合作業をスピカは今回していない。

 神官管理人には、神を崇めに教会へいきたいのです、と信仰心を口にしただけの話だった。

 教会へ向かう道を、真っ直ぐに歩きスピカはひたすら神官に出会わないことを祈りながら、式紙を空へ放つ。

 彼が町にいるのであれば、式紙に気づいてポケメルなる通信機に連絡をくれると淡い期待を持ちながら式紙を見送る。
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