ロデオ・カルテット─シールドロック─鳥籠編
 その折り、新着メルマークが点滅する。

 慌てるように文面に目を走らせる。

 メルの主は、数ヶ月前に実家で別れたヴォルラス・ローレンツと言う監獄島の数学教師からである。

 西国、サージに出張することになったので、会えるならあいませんかとのことだった。

 スピカは、すぐさま連絡を返した。

 悩む必要も、迷う必要もない。

 今、スピカが立っているその場所が、ヴォルラスの告げるサージなのである。

 ただ、この偶然の誘いをスピカはメルを送った後に疑問を抱いた。

 ローレンツ家は剣豪一家であり、政府内でも名の知れた格闘家である。

 父親のカルシスが政府軍の長官でいくつか部隊を指揮する権限を持ち合わせていることはスピカも知っていたが、滅多なことで戦争に介入することが無いこともよく知っていた。
 たから、ヴォルラスがサージに出張と言うのはいささか不自然ともいえる。とはいえ、ひとりで敵地をうろつくに耐えなかったスピカは、ヴォルラスが着くという馬車屋に、少し早めに行って到着を待つことにした。

 彼と離れて、数時間経つ。

 放した式紙からはなんの音沙汰もない。

 スピカは馬車屋の隅っこで深い息を吐いた。
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