ロデオ・カルテット─シールドロック─鳥籠編
「よう、新入り。
 さっき鼠が出たって聞いたが何か聞いてないか」

 材料を切るチェストに、緑目の青年が小声で聞いてきた。

「鼠なんか出たら、料理だせないっすよ」

「ばか、そうじゃねえよ。
 施設荒らしが出たそうじゃねえか」

 チェストの頭を叩いた青年が、呆れたように首を振る。

 青年のエプロンポケットには、クルルと書いた名札が付いていた。名字が無い人間の大半が孤児出身である。

「施設荒らしっすか、聞いてないっすね。
 今、帰って来たばからなんっすよ」

「なんだ、そうか、なら知らねえのも無理ねえな」

 チェストより少し背の低い青年は、短い髪をバンダナで覆いなおした。

「施設になんかあるんすかね」

 パプリカやら人参をボールに入れて聞き返す。

「あるんだろ、荒されるくらいの何かがよ」

 クルルは、口元に笑みを浮かべていた。それが、悪戯に目覚めた子供のように思えてチェストは制した。

「やめるっすよ。
 無駄に命を張るのは」

「なんでだよ。
 気にならないのか」

 クルルが驚いたように顔を上げてくる。チェストは、それに更なる危機を感じる。

「俺っち、無駄働きはごめんっす」
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