ロデオ・カルテット─シールドロック─鳥籠編
「無駄働き?
 良いよ、俺がひとりで覗いてくる」

 クルルは、手際よく仕事を片づけるとチェストの側を後にした。

 てっきり、巻き添えを食うものと覚悟していたチェストだけに、クルルの行動は余りにもあっさりとしていた。

 厨房は、届いた野菜で埋め尽くされ、あちらこちらで連れてこられた料理人と急遽、雇われた料理人が忙しなく行き交っている。

 確かに、ひとりやふたり、抜けたところで、周りは気づかないのかも知れない。

 料理長はなんとも頼りない娘で、いかつい男共に何か聞かれる度に、あわあわ、おどおどと指示をだしていく。それで、良くこの厨房は回っていた。

 料理も着々とできつつある。

 食べに来るのは、兵士だ。神官長には別に料理を運ぶようである。

 チェストが、料理長に運ぶっすよと一言掛けると、料理長のミラルは笑顔で礼を述べた。

 出来上がった料理をカートに載せて、チェストは言われた部屋へと向かう。

 施設内への扉は開きっぱなしで不用心と言えば不用心だったが、ミラルの助言通り神官長のギバルの部屋前にある扉は、パス無しでは開かなかった。

 渡された紙を流し見て、その長さに憂鬱な顔をする。
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