ロデオ・カルテット─シールドロック─鳥籠編
 その先でブギルは小さく笑い答えた。

「普通に暮らしてたら、夜はちゃんと眠れるっすよ」

 チェストもまた、クルルの後ろから宥めるように言う。

「うるさい、お前等の言うことなんか知るかっ」

「話が逸れたね。
 欠陥品について知ってることはそれだけかい」

 怒鳴り散らすクルルに近寄ったブギルの手が軽くクルルの頭に触れ、睨み上げるクルルに、口元だけの歪な笑みを向ける。

「妹を助けるのを手伝え。
 そしたら、教えてやるよ、DMの弱点」

 それに、負けじと言い放たれた提案に、ブギルは思わず吹き出した。

「なんだよっ。
 なら、殺せ、お前等と同じ人間になるくらいなら死んだ方がましだっ」

 チェストに抑えられたまま、喚くクルルにブギルは肩を竦めて素っ気なく椅子へと戻った。

「わかった、その妹さんを探すことくらいは協力しよう」

「本当かよ」

「人探しは得意だからね。
 似顔絵は机君にでも書いて貰ってくれ」

 ブギルがなぜ笑っているのか知れなかったが、クルルは自分の身の安全を確保できたと勘づいて密かに胸を撫で下ろした。

 風が、強くなったのか安い宿屋が僅かに軋む。

 改めて名を名乗りクルルは、床に座る。
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