ロデオ・カルテット─シールドロック─鳥籠編
 ぼやく彼にスピカは円眼鏡を押し上げた。

「結果、核となる人々は逃げて施設も壊滅。
 資料も実験室も空だったそうですからね、関わった人々は減給処分となったようです」

 一度、酒場を出た二人は話をしながらヴォルラスが連れて行かれたであろう警備警察隊事務所の入口に佇んだ。

 監獄島とは造りがまるで違う事務所に彼が些か面を食らったように、事務所を見上げた。

「戦争中にしては立派だな」

 もっともな感想にスピカも素直に頷いた。

 その時、この町特有の軍服を羽織った兵士が数名、せわしなく扉から出て来る。

「あ、あの。
 ヴォルラス・ローレンツを引き取りに来たのてすが」

 スピカがすかさず声を掛けると、兵士のひとりが足を止めて振り向いた。

「失礼ですがあなた方は」 

 その問いに、スピカが、ヴォルラスの旨を説明するが対応した兵士は首を傾げ、一度、事務所に戻るとやはり疑問符を飛ばしたまま、二人の元へ駆けてきた。

「他の部署ではありませんか。
 等事務所に連行された人物にその名前はありません」

 兵士は、そう言うと一礼し仲間の兵士の元へ走って行った。

 風が、容赦なくコリアを駆け抜ける。

< 62 / 142 >

この作品をシェア

pagetop