ロデオ・カルテット─シールドロック─鳥籠編
「本当に、痛みを感じないのね。
 それは、腕を吹き飛ばしても同じかしら」

 服を握る手にアリトの手が重なる。

 彼は、とっさにそれを振り払い後へ退くとボーガンの矢を無造作に抜いた。

「グランドフィールド」

 アリトの掛け声に、ヴォルラスと彼中心に立ち上がる火柱。

 下打つ彼と逃げ遅れたヴォルラスの隙をついて、狼が娘を連れ去る。

「待てっ」

 彼がその後を追うことを今度は、案内役の鸚哥が止める。

「本気を出したら如何かしら、私は別に死ぬことを恐れていないのだから」

 アリトの淡々とした声に彼は振り向いた。

「あんたを殺すのは俺の役目じゃない。
 それより詐欺師出せ」

「それはどういうことかしら。
 クラフトは、私に関与しないわ、他を当たりなさい」

「あの鸚哥、詐欺師のだろ」

 彼が言い募れば、アリトは小さく笑う。

「そうね。
 どうやらクラフトも勘づいたみたいね。
 それじゃ、良い旅を」

 元から決着を付ける気のないアリトは、それだけを軽く言い放つと、彼の前から姿を消してしまう。

 彼は、特に追い掛ける様子は無く、一発で沈没した剣士を溜め息混じりに見据えていた。
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