ロデオ・カルテット─シールドロック─鳥籠編
「後を追わないのですか」

 ヴォルラスが、火柱で覆った火傷に顔を歪めて起きあがる。

 彼は、頷いてから矢羽の焼けたボーガンを引き抜いて、黒いコートにできた染みを一瞥した。

「傷は、大丈夫ですか」

「傷より、毒の周りが早い、正直立ってるのが精一杯だ」

 痛みよりも身体の痺れを口にする彼に、ヴォルラスはやはり人間と構造が違うのだなと思ってしまう。それでも、顔にも口にも出さず彼を見返した。

「わかりました。
 私は銀雨(ギンウ)とルミアさんを追います。
 それと、スピカさんにも連絡を付けますね」

「あいつには、連絡するな」

 ヴォルラスの行為をきつい口調で断り、彼は鸚哥の去る先を見つめた。

「しかし、その状態では」

 ヴォルラスが心配する理由に、彼の身体が無駄に震えていることがある。しかし、彼は頑なに首を振る。

 ヴォルラスは、彼にそれ以上は言わなかった。

「わかりました。
 私はあの式紙を追います」

 ヴォルラスは言うなり、走り出す。

 そのスピードは天性のものであり、神様から与えられた速さとして有名な代物で、ヴォルラスの特技のひとつである。

 彼はそれを見送って、壁に凭れた。
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