ロデオ・カルテット─シールドロック─鳥籠編

3話/底なしの闇

「結界が崩れた今、我々のすべきことはひとつ。
 神官軍の討伐と領域の侵略。
 皆の共、いくぞおっ」

 ヴォルラスと隊長である彼が、アリトと対面するより少し前。

 政府軍の突撃はそんな掛け声から始まった。

 とはいえ、ゲートの向こうに一行が雪崩れ込めば一転するバロックスの風景に全員が足を止めたのは言うまでもない。

 騒ぐ冷たい風すら熱風に変えて、DMと名付けられた凶器が雄叫びを上げ、死体を蹴散らし、燃える町を舞台に踊り狂っていた。

 唖然とする政府軍に、逃げ延びようとする人間が我先にとゲートを潜る。

 そこに、少女を探していたスピカは居た。

 避難する人々を誘導し、ゲートにの向こうに入り、種でもってDMの足止めをしようと試みる。

 政府軍には生憎、結界に関する知識を持つ種師がいないために、ゲートをせき止める手段が無いと叫ぶ兵士の声にスピカは名乗りを上げ、結界を構成させようとゲートの前に立つ。

 だが、そこで悲劇は起きた。

 走って来た一匹の狼がスピカの背に体当たり、ゲートの向こうに押しのけたのである。

 余りの唐突な介入に、またしても全員が目を点にした。

「うっわあっ」
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