ロデオ・カルテット─シールドロック─鳥籠編
 そのゲート周辺が騒がしくなる。

 黒いコートに黒い帽子、サングラスを付けた中肉中背の青年が、静かにゲート前に立っていた。

 端から見ても怪しげな出で立ちに、兵士達が手に手に武器を携えて青年を取り囲む。

 青年が被る帽子には、式紙の雀がちょこんと止まっていた。それがまた、怪しさを倍増させている。

「神よ、一体なにをっ」

 その後から息を切らして走って来たのは、コクリートの部下であり、ヴォルラスに彼への伝言を頼まれた兵士であった。

 兵士の大袈裟な一声に、戦闘態勢の仲間とクルルの表情が引きつる。

 だが、神と呼ばれた青年は周りの反応を気にも留めずに、ゲートに歩み寄り掌を重たい鉄の扉に押し付けた。

 誰もが、結界の影響でゲートが開かないことを知る中で、彼がとる行動は異質なものでしかない。

「神よ、お止めください。
 その向こうには災いが眠ります」

 兵士の懇願も彼には聞こえていないのか、はたまた最初から聞く耳を持っていないのか、彼は何やら人間には理解できない言葉と言う奴を口にして、扉を押した。

「お止めください。
 災いがっ」

 たまらず、兵士が止めに入ったが彼はそんな兵士を無言で殴り飛ばしてゲートの中に入る。

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