ロデオ・カルテット─シールドロック─鳥籠編
 クルルはその出来事を逃さなかった。
「おい、坊主」

 兵士がその異様な光景に目を円くしている間に、クルルはゲートへと走り抜ける。そのとき、ぼんやりしていたチェストを道連れにして。

 そして、三人がゲートを抜けた後、結界が修復し兵士達は力が抜けたように顔を見合わせた。

 その中にバイト中のブギルはいた。

(やれやれ、私だけ置いてきぼりかい)

 結界を操る者の正体に気づき苦笑を漏らし、茫然とする兵士に視線をくべると小さく鍵詞を呟いた。

 ゲートに見入っていた兵士が、無意味に悲鳴を上げて崩れると、茫然としていた兵士一行がそちらを向き異変に気づいて持ち場を離れた。

 芸術品と呼ばれる彼が起こした所行の直ぐ後のこと、気が動転した人間も居れば、事態の早さに追い付けずに硬直する者もいる。

 まともに対処するべく動いた兵士は、やはり上位階級の人間だろうと推測し、ブギルは帽子を深く被り直すと、彼らにひとこと言い放つ。

「先程逃れた神官があの角を曲がるのを見ました」

 それも、無駄に慌てた口振りで、如何にもその攻撃に腰を抜かし、自分は全く使い者になりませんと周りから思わせてしまうような態度で。
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