最後の夏-ここに君がいたこと-
ばあちゃんは、悠太につかつかと近寄るとワイシャツを掴んだ。


「ばあちゃん!?」


驚いて声をあげた。

ワイシャツを掴んだまま、ばあちゃんが悠太を睨みつける。今にも引っ叩きそうな勢いだ。


「悠太、どういうことかちゃんと説明しな」


何だ。この展開は!

感動の再会となる予定だったのに、これじゃあ因縁の相手との再会だ。


「ばあちゃん、ごめん! 私が悠太からの手紙の話してなかったから!」


「いやいやいや! ばあちゃん! そんな怒らなくても」


間に入った陸がゆっくりと、ばあちゃんを悠太から引き離す。


「あとで、ちゃんと話すから」


俯いていた悠太が顔をあげると気まずそうに笑う。


「今は勘弁して。時間がないんだ」


ばあちゃんは、相変わらず悠太を睨みつけたままだ。


「え、話してあげたら?」


裏山に行きたくない私はロンドンでの話をするよう、悠太を促す。

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