最後の夏-ここに君がいたこと-
しかし昼間なら20分くらいで着くはずの頂上に、私達は1時間近く登ってもたどり着かない。

そう、私たちは道に迷ったんだ。

その内、道すらもなくなり、気が付けば、道なき道を歩いていた。


「悠太ぁ、俺もう嫌だよぉ恐い」


当然一番最初に泣き始めたのは、ヘタレの陸。


「すぐ泣く!泣くなよ、男のくせに」


私も内心怖かったけれど、強がるしかない。

怖いなんて口に出したら、陸と同じだから。


「帰りたいー」


「べそべそしないでよ!」


「もうちょっとで、てっぺんだと思うんだけど……」


悠太が斜面を見上げる。

今思えば悠太も焦っていたと思うし、怖かったはずなのに、私達を心配させまいと冷静なふりをしていた。

< 118 / 350 >

この作品をシェア

pagetop