最後の夏-ここに君がいたこと-
陸の家も私の家も当然ながらシャッターが下りていて真っ暗だった。

「よいしょ」と陸が看板から手を離す。

看板がミョィンと奇妙な音を立てた。


「じゃあなー、おやすみ!!また明日な!」


「おー、おやすみ」


軽く右手をあげると、陸はまた口笛を吹きながら家に入っていった。

ぱたん……とドアが閉まる音がする。

残された悠太と私の間に妙な沈黙が流れた。


何だろ、この沈黙。


でも陸もいなくなったし、聞くなら今しかない!

今聞かなかったら、ずっともやもやしたままだ。

意を決して口を開く。


「あ、あのさ……」

と、同時に悠太が言った。


「志津、海行かない?」


「え?」


「海っ!砂浜見に行こーぜっ」





……ふたりで?

想像もしていなかった展開で
一瞬、言葉に詰まった。

 
 
 

「…う、うんっ!!行くっ」




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