最後の夏-ここに君がいたこと-

思い出

目が覚めると、外はもう暗くて閉め忘れたカーテンから月明かりが差し込んでいた。


「夢ですら会ってくれないんだ」


重い瞼をこすりながら、呟いた。

その時ふと目に赤いものが飛び込んできた。

テレビ台の下に閉まってある、ずっしりと重い赤いベロアの表紙。

大きな写真アルバム。
背表紙には子供の頃の私の字で“3人のおもいで”と書いてある。

しばらく開いていなかったけれど、アルバムが『開いて』と言ってるような気がした。

ほこりを払いながらそれを引っ張り出した。


「こんな時に……」


開かないほうがいいに決まっている。

アルバムを開けば、きっとまた悲しい気持ちになるだけだ。

そう思っているのに。
アルバムを開く手が止められない。

重たい表紙をめくる。

開いた瞬間に小さな悠太がこっちを見て、満面の笑みで手を振っていた。

目頭が熱くなって思わず目を背けそうになる。



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