最後の夏-ここに君がいたこと-
悠太が旅立つ前夜、私は自分の部屋に閉じこもってぼーっとしていた。

明日なんか永遠に来なければいいのに……。

いっそのこと、大雪が降って列車も飛行機も止まってしまえばいい。

いや、悠太のパスポートを盗み出して隠すのが一番手っ取り早くないか?

あー、でも、どうやって部屋に忍び込もう……。

現実逃避していると、開いていた部屋のドアから陸がひょこっと顔を出した。


「よっす」


こいつはまた勝手に部屋に上がってきやがって……。

陸は、トレーニングウエアに裸足で、ずかずかと部屋に入ってきた。


「ノックぐらいしてよ……」


「ドア開いてるのにノックすんの?」


「……」


こいつに一般常識を求めること自体が間違いだった。怒る気も起きない。


「もー、いい」


寝たまま力なく言い放つと、顔の上に枕をかぶせた。

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