最後の夏-ここに君がいたこと-
「よいしょーっ」


陸が石段の一番上にばあちゃんを置いた。

背中を拳でトントン叩いている。


「うん。なかなか良い筋トレになった」


陸が満足そうに太ももの筋肉を叩いた。


「早く行こう! 始まっちゃうよ」


陸とばあちゃんを急かしながら体育館へ向かった。

試合が地上波で放送されない事をうけて、学校側が体育館でパブリックビューイングを実施することに決めたのは、1ヶ月前の事だ。

手作りしたチラシを商店街の各店先に掲示したりして、それはもう学園祭以上の力の入れようだった。


「でも人なんか集まるのか?21時半キックオフって……この町の連中は寝るの早ぇだろ」


「だいたい大人たちもサッカーより野球でしょ。興味ないんじゃない?」


幼い頃、日本中がW杯で盛り上がっていた時に、ラーメン屋では野球中継が放送されていたことを思い出す。


「高校関係者だけだったりしてな」
と、自虐的に陸が笑う。


校門を通り抜けると、真っ暗な夜の闇の中で体育館だけが明るく際立っていた。

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