最後の夏-ここに君がいたこと-
『今日の現地気温は35度、湿度はなんと80パーセントです。非常に中東らしい気候ですね』


『ピッチの状態もあまり良くないみたいだから、今日は難しい試合になりそうですねぇ』


『サウナの中みたいですからね。キャプテンを務める山田は試合前に、“ピッチの状態はそこまで気にしてないです。ただ湿度が高いのは辛いかな”と話していました』


スクリーンの中から入場曲が流れ出した。


『選手入場です』


「俺、わくわくしてきた!」


陸が興奮を抑え切れないといった様子で笑う。

今日ばかりは陸の気持ちに大賛成だ。


「私も!」
陸に負けない笑顔で返す。


選手達が次々と入場してくる。

その中に懐かしい顔が見えた。

少し緊張した表情で、それでも堂々と胸を張っている。


心臓がどくんと大きく脈打った。


陸が私の背中をバシバシ叩く。


「志津、見ろ! 悠太だ!」


その大声はうるさいはずの体育館に大きく響いた。

周りに居た人達がいっせいに振り返る。








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